1.心肥大
心肥大とは、心臓の筋肉(心筋)の量が増えた状態をいいます。心肥大がまだ 初期の段階では、心筋の収縮力は維持されますが、肥大が進むと心不全や不整 脈などの心臓病を起こす場合があります。
心肥大には次の2つのタイプがあります。?心筋細胞が心臓の内腔に向けてど んどん厚くなっていくタイプ(求心性肥大)と、?外へ向かって広がっていく タイプ(遠心性肥大)です。
心肥大は、原因となる病気があって、それが心室に負荷をかけたために結果的 に起こる状態です。独立した心臓病というわけではありません。
求心性肥大の場合は、心臓の壁が厚くなって、心臓の内腔が狭くなった状態で すが、これは高血圧や大動脈弁狭窄症などがあって、心臓から血液を押し出す のに大きな力が必要となった場合に生じやすくなります。
一方、遠心性肥大の場合は、むしろ心臓の内腔が拡張した状態です。逆流のあ る弁膜症や先天性心疾患でみられます。
心臓からの拍出量を確保するために、内腔を拡張するように心臓が肥大して起 こると考えられます。
*一部に原因となる疾患がないのに、心肥大が起こることもあります(突発性肥大型心筋症)。
(1)心肥大の診断
心肥大の診断法は主に次の3種類です。
a.レントゲン・・・心臓の大きさを影絵としてみる方法です。したがって心 臓の壁の厚さまではわかりません。
b.超音波・・・心臓の壁の厚さや内腔の容量をみます。
c.心電図・・・心肥大の特徴的な変化の型(右室肥大、左室肥大)や、その 程度をそれなりに把握することができます。
2.心筋炎
心臓を動かす筋肉である「心筋(しんきん)」が、炎症を起こす疾患が、心筋 炎(しんきんえん)です。
心筋炎の多くは原因不明です。ただし、リウマチ熱や免疫系の病気である全身 性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、強皮症(きょうひしょう)、サルコ イドーシスなどから、心筋炎になることもあります。
頻繁に起こる心臓病ではなく、予後も良好ですが、完全になおることは少ない ようです。
(1)心筋炎の症状
心筋炎の場合、ウィルスや細菌が心筋に感染し、心筋の細胞が犯されます。そ のため心臓の収縮力が弱まり、心臓が肥大したり、心臓機能が低下したりとい った症状が出ます。
初期症状は、発熱やのどの痛み、頭痛、倦怠感など、風邪によく似た症状が出 ます。吐き気や嘔吐、下痢、腹痛からはじまるケースもあります。
その後、数日から一週間ほどして、動悸や胸痛、呼吸困難、脈の乱れ、むくみ が現れます。これらの症状はあまり長くは続かないため、心筋炎が起こってい ることに気づかないままのこともあります。ただし、身体が疲労している場合 に心筋炎を発症すると、急速に悪化し、ショック状態になるなど、危険な状態 に至ることもあるので注意が必要です。
(2)ショック状態に陥った場合
ショック状態に陥った場合は命の危険がありますので、救急車を呼ぶ必要があります。
治療をおこなわずにいると心臓の機能が低下するので、医師の治療を受けるこ とが大切です。安静にして、栄養の補給や輸液などの処置がおこなわれます。
心臓の機能が低下している場合には、ジギタイス製剤を用いたり、利尿剤の服 用、食塩の制限がおこなわれます。
3.心臓リウマチ
扁桃炎(へんとうえん)や、咽頭炎(いんとうえん)、あるいは喉頭炎(こう とうえん)にかかってから、2週間から3週間後に、急性りウマチ熱という全 身性の炎症があらわれることがあります。心臓リウマチというのは、このリウ マチ熱の障害が心臓におよんだものです。日本では、心臓リウマチは、最近、 非常に少なくなりましたが、それでもまだ急性リウマチ熱の半数以上は心臓リ ウマチなのです。
心臓リウマチの発病年齢は、リウマチ熱と同じで、小学校年齢に多く、5歳前 後から15歳くらいまでがほとんどです。
原因は、溶連菌ですが、この菌に 感染しても全員が心臓リウマチを起こすわけではありません。子どもの70パ ーセント近くは溶連菌に感染するといわれますが、そのうち心臓リウマチを発 症するのはごく一部にすぎません。
(1)心臓に関する症状
症状は、発熱と、脈が速くなり、心臓に痛みや動悸が起こります。倦怠感が強 まり、食欲がなくなります。腹痛や吐き気がみられることもあり、症状が悪化 すると心臓への圧迫感や呼吸困難がみられます。
心臓の症状だけのときは、風邪がぶり返したのではないか、と考えられてしま うことが多く、かえって心臓以外にも症状を伴う場合よりも注意が必要です。
(2)心臓以外の症状
症状は心臓以外にもおよび、ひじやひざの関節の腫れや痛みを伴うこともあり ます。また、 皮膚に痛みのない灰色のしこりや、赤い輪状の斑点があらわれ ることもあります。さらに、脳が犯され、ひとりでに手足が動いてまるで踊っ ているかのようにみえる「舞踏病(ぶとうびょう)」を発症することもありま す。
4.心臓神経症
具体的にこれといった明瞭な心臓の障害がないにもかかわらず、動悸や息切れ 、胸痛、頻脈などの心臓病の症状が現れることがあります。その場合、「心臓 神経症」の可能性が考えられます。
この疾患「心臓神経症」は、精神科の立場からは、「不安神経症」の一種とされ ます。
心臓神経症は、ストレスや不安が原因と考えられますし、各種の心臓検査をお こなっても心臓に異常がみられないだけでなく、心臓のはたらきに影響を与え る病気(たとえば、貧血、甲状腺機能亢進症、呼吸器疾患など)も認めらない のです。
ほかの心臓病と同様、一連の検査がおこなわれます。
一般的な診察・検査として、a.病歴、現在の症状、などを聞く。b.聴診器 の身体的な所見。c.血液、尿の検査所見。4.胸部X線検査。
心臓病の専門の検査として、a.心電図、b.運動負荷試験、c.ホルター心 電図、d.心エコー図、e.心臓カテーテル検査、f.心音図、g.心臓核医 学検査などです。
これらの検査をおこなってみて、器質的、機能的な心臓病の可能性が否定され た場合、「心臓神経症」が疑われることになります。そして神経症の検査とし て、心理テスト、性格テストがおこなわれることになるのです。
治療は、心理的な治療が主体となります。精神安定薬などが用いられる場合も あります。
精神的なものだから、ということで、ではその患者さんの苦しみを軽視してい いか、ということではまったくありません。器質的、機能的な疾患と同様、そ の苦しみを何とか取り除けるよう、医師は最善を尽くしますし、患者さんも医 師を信頼して心を少しでも楽に、安定させる工夫をし、周りのご家族も協力す ることが大切でしょう。